この記事では、カスタマーサクセスと営業の違いから、連携のポイント、業務内容、共通点について詳しく解説します。顧客に向き合うという点では、同じような仕事に思える営業とカスタマーサクセスですが、その具体的な業務内容を具体的に理解することで転職の助けにもなります。
また、カスタマーサクセスと営業の融合で、売上の最大化が実現できる理由も紹介します。具体的なKPIや求められるスキルセットを明確にし、どちらの部門がどのように貢献するかを知ることも、どちらの職種を選択するかのきっかけになるでしょう。
1. カスタマーサクセスと営業の違い
カスタマーサクセスと営業の大きな違いは、向き合っている顧客が「既存か新規か」という理解が最もわかりやすいでしょう。(もちろん、営業の中にも既存営業やルート営業などの種別があるので一概には言えません。)
より細かい表現をするのであれば、「カスタマーサクセスは既存顧客の成功」を目的とし、「営業は顧客からの新規売上創出」を目的としています。
1.1 カスタマーサクセス
1.1.1 業務内容
カスタマーサクセスは、上記の「既存顧客の成功」(=カスタマーサクセス)を目的に顧客が製品やサービスを最大限に活用し、その価値を得られるよう支援することを目的としています。
具体的には、顧客のニーズに応じてカスタマイズされたオンボーディングプログラムを提供し、継続的なサポートやトレーニングを通じて顧客が目標を達成できるようサポートします。また、顧客の使用状況をモニタリングし、問題が発生した際には迅速に対応するために、カスタマーサポートチームと連携します。
たとえば、SaaS企業においては、カスタマーサクセスチームは、新規顧客がスムーズにサービス導入できるようオルツのプログラムなどを提供し、使用率向上を助けます。
具体的な業務内容については「未経験からでもカスタマーサクセスに転職はできる?」にも詳しく書いてありますのでぜひご参照ください。
1.1.2 求められるスキル
【カスタマーサクセスに求められる4つのスキル】
カスタマーサクセス担当者には、上記のようなスキルが求められます。特に、コミュニケーション能力に優れており、顧客の声を引き出す力は必須です。
カスタマーサクセスの業務では基本的に顧客のフロントを担当するので、ヒアリングや使用状況の中から、顧客の課題を発見することと、それを解決するためのベストプラクティス(社内に蓄積されている成功事例や手法)を引き出しながら、顧客の成功を実現することが求められるからです。
さらに、問題解決能力や分析力を備え、データに基づいて提案を行える能力も重要です。顧客視点で考えることができる柔軟性や創造性も必要になります。
カスタマーサクセスに求められるスキルや、どんな人に向いているかは以下の記事により詳しく解説しています。
1.1.3 責任を持つKPI
カスタマーサクセスのKPIには、顧客の継続率やチャーンレート(解約率)を改善することが含まれます。
顧客満足度の向上ももちろん重要です。また、顧客が製品をどれだけ活用しているかを示す製品使用率や、アップセルおよびクロスセル率もモニタリングされています。データによる効果測定を行い、顧客の成功を確実にすることが求められます。
1.2 営業
1.2.1 業務内容
営業の主な業務は、新規顧客の獲得と売上の拡大です。
彼らは顧客のニーズを把握し、適切な製品やサービスを提案します。これは直接的な売上増加を目指す役割で、リードの発掘や商談による顧客へのアプローチ、見積もりの作成、そして最終的に契約締結に繋げることを目指します。
1.2.2 求められるスキル
営業職には、説得力のあるプレゼンテーションスキルと優れた交渉力が必須です。顧客ニーズに対して的確な提案をしながら、売上にコミットします。そのため、数値に対する感度も求められたりしますし、関係構築を行う積極性と持続力も重要な資質です。
1.2.3 責任を持つKPI
営業の成果を測るKPIとしては、新規顧客獲得率や売上目標の達成率が重要です。また、商談成約率、平均契約単価、製品やサービスの市場シェア拡大なども重要な指標として用いられます。これらの数値が、営業活動の効果を示す基準となっています。
前述のカスタマーサクセスのKPIと比較すると、下記の表のようになります。
要素 | カスタマーサクセス | 営業 |
---|---|---|
目的 | 顧客の成功と継続的な関係の構築 | 新規顧客の獲得と売上の拡大 |
業務内容 | オンボーディング、トレーニング、サポート | リードの発掘、提案、契約締結 |
求められるスキル | コミュニケーション、問題解決、データ分析 | プレゼンテーション、交渉、戦略性 |
KPI | チャーン率、顧客満足度、アップセル成功率 | 新規獲得件数、売上達成率、成約率 |
さらに、カスタマーサクセスにおける役割に関しては、具体的な事例や最新の動向を理解するために、Customer Success Associationを訪れることをお勧めします。
2. カスタマーサクセスと営業の連携ポイント
SaaS企業など、顧客のLTVが企業にとっての重要なKPIになる場合は、カスタマーサクセスと営業の連携が重要です。両者が協力し合うことで、顧客満足度を高め、持続的な関係を築くことが可能になります。ここでは、連携において注目すべき具体的なポイントを詳しく解説します。
2.1 顧客の受け渡しが重要
営業は主に顧客の新規開拓を担当し、成約後にカスタマーサクセスへ顧客を引き渡します。
この際、顧客のニーズや特性を正確に伝えることが求められます。例えば、新製品に興味を持った理由や、特に解決したい課題についての詳細情報を共有します。このような情報のスムーズな引き継ぎが行われることで、顧客にとってはズレがなく、導入を決定した段階の期待値をしっかり満たす運用ができるようになります。
2.2 仲が悪くなってしまうことも?
カスタマーサクセスと営業の間で意見の食い違いが生じることがあります。この原因として、営業は短期的な売上達成に注力し、カスタマーサクセスは長期的な顧客満足度の向上を目指すという異なる目標が挙げられます。
営業としては受注のために顧客の期待値を上昇させますが、時にその期待値がプロダクトが提供できる価値を大きく超えていたり、実際にかかるコストやリソース感が擦り合っていないことがあります。
その際に、受け渡し先のカスタマーサクセスとしては顧客との認識ズレが発生してしまい、クレームのような事態や、期待値を超えるために過度なコミットが求められたりします。
このような要件ズレが時に部門間での不和を生んでしまうことがあります。
このような違いを克服するためには、両部門間での定期的なコミュニケーションが重要です。週次会議や情報共有のプラットフォームを活用するなどの対策が効果的です。
2.3 部門責任者レベルでの協力
カスタマーサクセス・営業の両部門の責任者が協力することも重要です。
責任者間の定期的な会議を開催し、各部門の進捗状況や課題を共有することで、問題の早期発見や迅速な解決が可能となります。そのため、責任者同士が強固な信頼関係を築くことが、現場レベルでの良好な協力体制構築にとって重要です。
2.4 共通目標の設定
カスタマーサクセスと営業が共通の目標を持つことで、両部門間で一貫したビジョンが醸成されます。たとえば、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)の向上を共通のKPIとして設定することが考えられます。これにより、部門間での一致団結が促進され、顧客への提供価値も向上します。
連携ポイント | 取り組み事例 | 期待される効果 |
---|---|---|
顧客の受け渡し | 情報共有プラットフォームの活用 | 顧客体験の向上 |
意見の一致 | 定期的な部門間ミーティング | 迅速な問題解決 |
責任者レベルでの協力 | 定期的なリーダー会議 | 部門間の信頼関係強化 |
共通目標の設定 | 共通KPIの導入 | 組織全体の一貫性向上 |
3. 今後のカスタマーサクセスと営業の関係
3.1 カスタマーサクセスも数値を求められる時代に
近年では、カスタマーサクセスが連続的な企業成長の実現のために重要な要素となっています。 特にSaaS企業を中心に、カスタマーサクセスの成果を具体的な数値で示すことが求められています。
これにより、顧客満足度(CSAT)やネットプロモータースコア(NPS)などの指標が採用され、解約率の低減やLTVの向上が非常に重要な課題となっています。
企業はこれらの数値をもとに戦略を練り、より効率的なカスタマーサクセス活動を展開するようになっています。
そしてSaaSやクラウドサービスの競争が激化した今では、単純なサービスの機能だけではなく、現場担当者であるカスタマーサクセスが運用中の顧客の課題に最も近いロールなので、課題を拾い上げ、アップセルやクロスセルに繋ぎこむことが期待されていますし、それがSaaS企業にとって重要な売上成長戦略となっています。
3.2 カスタマーサクセスが従来持っているスキルも、営業に還元できる
カスタマーサクセスが持つスキルセットは、営業活動に直接還元できます。具体的には、顧客理解や問題解決のスキルが挙げられます。これらのスキルにより、営業担当者は顧客のステージや状況に合わせた提案が可能となり、より高い成約率を実現できます。顧客満足度を上げることで長期的な関係構築が進むと同時に、カスタマーサクセスのフィードバックを元に営業は的確な製品改善提案も行えます。
要素 | 営業部門への影響 |
---|---|
顧客理解 | 顧客ニーズに合わせた的確な提案が可能 |
問題解決力 | 顧客との信頼関係を構築し、障害発生を未然に防ぐ |
この顧客理解と問題解決力の強化により、営業部門はより迅速に市場変化に対応でき、ビジネスの成長を一層加速させる土台が整います。